2025年9月26日
イベントレポート更新
第6回 KOBE アカデミックトーク
overview
日時 | 2025年2月25日(火) 18:30~20:00 |
---|
甲南大学 知能情報学部知能情報科
講師 木原 眞紀 さん Maki Kihara
千葉県御宿町出身。東京理科大学理工学部情報科学科卒業。その後、同大学院理工学研究科情報科学専攻に進学し、修士課程を修了。1年間の社会人経験を経て、博士課程に進学し、2021年3月に博士(理学)を取得。その後同大学情報科学科の嘱託助教として勤務した後、2024年4月より現職に着任。学部在籍時から一貫して、暗号理論の中でも暗号化したまま計算を行う「秘密計算技術」とその応用に関する研究に従事。
甲南大学 知能情報学部知能情報学科
講師 奥村 真善美 さん Makoto Okumura
2012年に京都教育大学教育学部に入学。当初は高校の数学教員を目指していましたが、ゼミ活動を通じて研究への情熱が高まりました。2016年に大阪大学大学院情報科学研究科に進学。2021年に修了後、北海道大学電子科学研究所を経て、2023年に甲南大学知能情報学部に着任。専門分野は偏微分方程式の数値計算とその理論解析。
大橋 一馬 さん Kazuma Ohashi
大学卒業後、IT・事業会社にて基幹システムの導入・開発に従事。その後、地域情報サイト「神戸ジャーナル」を立ち上げ、現在編集長を務める。株式会社ジャーニージーン代表取締役。
2025年2月25日に開催された第6回KOBEアカデミックトークでは、「 暗号化技術と数値シミュレーションが変える未来社会」をテーマに、甲南大学知能情報学部の木原眞紀さんと奥村真善美さんにプレゼンテーションいただきました。
● 私たちの情報を守る最先端技術「秘密計算」~暗号化技術の最先端とその応用~
木原さんは、暗号理論と秘密計算の基礎、およびその社会実装について発表しました。暗号化技術を用いた情報保護の仕組みを解説し、データを暗号化したまま処理できる「秘密計算」が、個人情報保護や安全なデータ共有にどのように貢献するかを示しました。木原さん自身の研究では、クラウド型認証システムの開発が進められており、鍵やカードなしでアクセスできる「手ぶらな社会」の実現を目指してい
ます。具体的な応用事例として、ホテルのオンラインチェックインや避難所の入退管理などが紹介され、技術の社会実装に向けた課題や意見交換の重要性が強調されました。
●身近な現象と数学をつなぐ数値シミュレーション技術の世界
奥村さんは、数値シミュレーションを用いた現象解析について発表しました。自然現象や社会的な事象は数式で表現されることが多く、特に微分方程式を用いた数値シミュレーションが、感染症の拡大予測や物質の分離現象の解析などに応用されていると説明。さらに、計算アルゴリズムの選択によって精度や計算効率が大きく変わることを示し、より正確なシミュレーションのためには数式の構造を保持しなが
らアルゴリズムを設計することが重要であると指摘。数値シミュレーションの応用範囲の広さを強調し、企業や研究機関との共同研究の可能性についても期待する旨を述べました。
パネルディスカッションでは、暗号理論や秘密計算に関する技術的な質問に加え、実社会での活用事例や課題について議論がなされました。暗号プロトコルの検証方法や計算の信頼性、暗号技術の応用範囲についての質問に対し、計算の正確性は数式やアルゴリズムで保証されるが、速度や精度の検証は研究として必要であることが説明されました。秘密計算の技術が日本や海外でどのように研究・実装されているかについて、企業や防衛分野での活用が進んでいる一方、社会実装にはまだ課題があることを指摘。さらに、地震予測の困難さや、数値シミュレーションを用いた避難行動の解析の可能性についても議論があり、数学モデルの限界と応用の広がりが示されました。最後に、量子コンピューターの進展がRSA暗号に与える影響や、ブロックチェーン技術との関係についての質問もあり、暗号技術の将来的な方向性についての関心が高いことが伺えました。
難しい技術を素人にもわかりやすく説明をいただいたので、理解が深まりました。
技術の応用によって、よりスマートで未来予測のできる社会が生み出せそうでワクワクしました。お二人にはぜひ社会実装に向けた取り組みをしていただきたいと思います。
とても楽しかったです。学びの多い内容でした。
秘密計算、数値シュミレーションの実社会のかかわりに興味がもてました。
秘密計算を非常に分かりやすく端的にトランプを用いて説明して頂き、また数値シュミレーションにおいても状態を数値化する噛み砕いた言葉で表して頂き理解を深めることができました。